無汗症(むかんしょう)とは
運動をしたり、お風呂に入ったり、あるいは暑い夏の日など、通常であれば発汗が起こる環境下でありながら、まったく汗をかかないことを「無汗症」と言います。
発汗は本来、体温調節、代謝など、身体の機能を維持するという重要な役割を果たしています。
無汗症によってまったく汗が出ないことは、簡単に体温の上昇を招き、熱中症、そして命の危険につながることがあります。
無汗症の症状チェック
無汗症の主となる症状は、発汗がないことです。またそれ以外にも、いくつかの症状が付随します。
- 汗をまったくかかない
- 風邪などによる高熱、運動・入浴などによる体温上昇の際の痙攣、意識障害
- 皮膚の乾燥、かゆみ、発疹
- 口の渇き、頭痛、吐き気、めまい(熱中症)
- 目の充血
無汗症の原因
先天性無汗症
遺伝子の異常によって、先天的に発汗ができない無汗症です。
先天性無汗症の場合、顔貌や歯牙異常、脳血管障害、腎不全など、さまざまな疾患を合併するケースが目立ちます。
後天性無汗症
熱中症、薬の副作用などによって、後天的に汗腺の機能が低下したり、汗腺が破壊されることで起こる無汗症です。
中でも特発性後天性全身性無汗症は難病の指定を受けており、こちらは自己免疫疾患である可能性が指摘されています。
汗をかかない状態が続くとどうなる?
じっとしている時に出る汗は、不快に感じることもあります。
しかし、本来発汗は、体温調節や代謝など、私たちの身体に不可欠なさまざまな機能を守る役割を果たしています。
そのため無汗症となり汗がかけないと、以下のような問題が発生します。
体温調整ができない
発汗は、上昇した体温を下げてくれます。汗が蒸発する時に生じる気化熱の働きによって、皮膚・身体が冷やされるのです。
ちょっとした運動であっても熱中症になり、最悪の場合、命を落としてしまうこともあります。
肌の水分が失われる
エクリン腺で作られる汗には、乳酸ナトリウムや尿素が含まれています。
これらの成分は水分とくっつきやすく、皮膚の水分を守ってくれる役割を果たしています。
汗をかけないと、尿酸ナトリウムや尿素が作られず、皮膚の水分が失われ、乾燥肌になってしまいます。
病気にかかりやすくなる
エクリン腺で作られる汗には、タンパク質分解酵素を阻害するリゾチームが含まれています。
汗をかけないと、リゾチームが作られないこと、肌のバリア機能が低下することから、さまざまな病気にかかりやすくなるおそれがあります。
汗をかかない病気は何科を受診するべき?
皮膚科、膠原病科を受診するのが一般的です。
皮膚科や膠原病科で異常が見つからない場合には、脳神経内科の受診を勧められることが多くなります。神経の異常によって無汗症が引き起こされることもあるためです。
治療方法
原因となる疾患が見つかった場合には、その治療を行うことで症状の改善を図ります。
明らかな原因が見つからず、特発性後天性全身性無汗症と診断した場合には、ステロイドを注射する治療を行います。現在のところ、それ以外の治療法がないためです。
治療の効果、副作用などを患者様と確認しながら、治療を進めていきます。
無汗症の検査について
※当院では、無汗症の検査には対応しておりません。