ケロイドとは
ケロイドとは、やけどなどの傷が治る過程で、皮膚の深いところ(真皮)で炎症が続くことで生じることで、血管が赤く透けて見えたり、皮膚が盛り上がったりする状態を指します。
そしてその皮膚症状は、元の傷の範囲を超えて現れます。
ケロイドは腫瘍ではなく、転移したり、命を脅かしたりするものではありません。
しかし、上記のような見た目の問題、そして痛み・痒みによって、お悩みの方が少なくありません。
以前はケロイドというと、治療による治癒がほとんど見込めないものでした。
しかし現在では、さまざまな治療法によって改善が期待できます。
ケロイド体質の見分け方
「ケロイド体質」とは、傷を負った後、ケロイドが発生しやすい体質のことを指します。
そしてこのケロイド体質は、親から子へと遺伝しやすい性質を持ちます。
ただ、ケロイド体質であるかどうかを、ケロイドが発生する前に見分けるということは困難です。
ケロイドが発生した時の皮膚の状態、「ちょっとした傷がケロイドになる」という患者様の自己申告によって判断しなければならないのが現状です。
一方で、実際にはケロイド体質ではない・軽度のケロイド体質であるのに、ひどいケロイド体質だと患者様が思い込んでいるケースもあります。
そのために、強い不安を抱えていたり、治療・脱毛などの処置を諦めたりしてしまっているという方もいらっしゃいます。
ケロイド体質であるか心配である、一度診てもらいたいという方は、お気軽に当院にご相談ください。
ケロイドになる原因
ケロイドになる原因は大きく、体質と物理的刺激に分けられます。
体質
女性ホルモン・高血圧
最近の研究によって、女性ホルモンや高血圧といった要因が、ケロイドの重症化に影響していることが分かってきました。
遺伝
ケロイドになりやすい体質というものが、親から子へと遺伝することがあります。
この体質を持つ方は、そうでない方と比べると、ケロイドになりやすいと言えます。
ただ、その程度はさまざまです。
物理的刺激
伸展
傷痕周囲の皮膚が伸ばされることで、真皮での炎症が悪化し、ケロイドが現れることがあります。
摩擦
衣類などとの物理的な摩擦によって、ケロイドが引き起こされることがあります。
紫外線・テープ
紫外線、傷を保護するテープを剥がす時の刺激も、ケロイドの原因となることがあります。
治らないケロイドを放置するとどうなる?
ケロイドを放置して、命に関わるような事態になることはありません。
しかし、年月とともに大きくなり、引きつれて硬くなり、部位によっては関節が動かしづらくなどの弊害をきたします。また痛み、かゆみも続きます。
この状態を瘢痕拘縮と呼びますが、瘢痕拘縮になると治療にも時間がかかるようになり、手術を要することも多くなります。
ケロイドになってからできるだけ早く受診することで、治療の効果が得やすくなります。
ケロイドの治し方
飲み薬
抗アレルギー剤である「トラニラスト」の内服を行います。
ケロイドの組織中の炎症細胞が出す伝達物質を抑制し、病変の鎮静化、かゆみなどの症状の緩和を図ります。
また、「柴苓湯(さいれいとう)」という漢方薬が有効になることもあります。
塗り薬
炎症を抑えるためのステロイド軟膏・クリーム、非ステロイド系抗炎症剤、保湿剤としてのヘパリン類似物質の軟膏・クリーム・ローション・スプレーなどの塗り薬を使用します。
固定・圧迫
ケロイドは、皮膚が引っ張られたり摩擦を受けたりすることで悪化します。
サポーター、包帯、胸帯、腹帯、ニーブレースなどによって固定・圧迫することで、患部の安静を保ちます。
圧迫には、過剰な血流および炎症を抑制する効果があります。
貼り薬
炎症を抑えるためのステロイドのテープ、保湿・安静のためのシリコンジェルでできたシート、ポリエチレンジェルシートなどを使用します。
ジェルシートは、洗って何度も使うことができます。
注射
ステロイドの注射によって、皮膚の盛り上がり・赤みの顕著な改善が期待できます。
ただし、毛細血管の拡張に伴い皮膚が薄くなることがある点に注意が必要です。
注射には痛みが伴いますが、当院ではできるだけ痛みを抑えられるよう、注射の方法を工夫します。
また、ステロイドの注射に抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、適切な使用により、ケロイドのタイプによっては劇的な効果が得られることがあります。副作用などについても十分にご説明し、ご理解・ご納得いただいた場合にのみ、ステロイド注射を行いますので、どうぞご安心ください。
レーザー
ケロイド中の血管を破壊させたり、コラーゲンの分解を促進する治療として、レーザーを使用することがあります。
手術
瘢痕拘縮を起こしたり場合や、保存的治療で十分な効果が得られない場合には、手術が選択されることもあります。
ケロイド部を切除し縫い縮めると、直前の傷痕が残ります。
ただ、その傷痕からケロイドが再発することもあり、その場合は以前より大きくなります。
そのため、一般には安易に手術をすべきでないとされています。医師と十分に話し合い、メリット・デメリットを理解した上で、治療を選択することが大切です。